【2024年問題】トラック運転手の一日の労働時間は何時間？1日の限度や平均を徹底解説！

トラック運転手の長時間労働が常態化する中、2024年4月から年間960時間の時間外労働上限規制が導入される。この規制は物流業界全体に大きな影響を及ぼし、働き方改革を迫られている。

トラック運転手の労働時間の現状

法律で定められたトラック運転手の労働時間

トラック運転手の労働時間は、一般の労働者とは異なる特別な規制が適用されています。通常、労働者は労働基準法で定められた法定労働時間の範囲内で働きますが、使用者と労働者代表の書面による協定（36協定）を結べば、年間360時間を上限に残業をさせることができます。

しかしトラック運転手は「自動車運転者」として扱われ、拘束時間が原則13時間以内（最大16時間）、休息時間は継続8時間以上と定められています。この特例は2024年3月末まで適用され、4月以降は改正法により年間の時間外労働に960時間の上限規制がかけられることになります。法律上、トラック運転手には厳しい労働時間管理が求められているのです。

実際のトラック運転手の平均労働時間

法律上はトラック運転手の労働時間について特別な規制があるものの、実際の現場では長時間労働が蔓延しているのが実情です。厚生労働省と国土交通省が行った調査では、トラック運転手の平均労働時間が月200時間以上に及ぶことが明らかになりました。

自動車運転者の労働時間規制は一般則に比べて緩やかであるため、どうしても長時間労働に陥りがちです。特に中長距離輸送の場合、車中泊を伴うことから1日の労働時間が9時間以上になることも珍しくありません。短距離輸送であっても、1か月の平均労働時間が200時間を超えるケースが多く見られます。

近年の運転手不足に伴い、1人の運転手が担う業務量が増加傾向にあり、長時間労働に拍車がかかっています。休息時間の確保が難しく、十分な睡眠時間が取れない運転手も少なくないのが現状です。こうした過酷な労働環境が、運転手の健康を脅かし、大きな事故リスクにもつながっているのです。

2024年問題とは？運送業界の働き方改革

「2024年問題」とは、2024年4月より自動車運転者の時間外労働時間に上限規制が適用されることで、トラック運転手の労働時間短縮に伴って運送業界全体に生じると予想される影響のことを指します。

働き方改革関連法の施行により、2024年4月からは自動車運転者の年間時間外労働時間の上限が960時間に設定され、罰則付きで運用されることになります。トラック運転手の長時間労働が常態化している中、運送業界は抜本的な働き方改革を迫られている状況です。

2024年問題が起きた背景

2024年問題が起きた背景には、長年にわたってトラック運転手の長時間労働が常態化していたという事情があります。運転手不足が深刻化する中、労働環境の改善は喫緊の課題となっていました。

2019年に成立した働き方改革関連法により、罰則付きの時間外労働規制が導入されましたが、トラック運転手については他業種に先駆けて2024年4月に上限規制が設定されました。規制の適用が猶予された背景には、運送業界の抜本的な構造改革の必要性があったのです。

法改正の狙いは、トラック運転手の労働環境改善と事故防止にありますが、長時間労働の是正には運送業界全体の働き方改革と物流の効率化が不可欠だと考えられています。2024年問題は、こうした状況を踏まえて浮上した課題なのです。

トラック運転手の時間外労働規制とその影響

2024年4月から適用されるトラック運転手の時間外労働規制は、年間の上限を960時間に設定し、違反した場合は運送会社に罰則を科すことになります。この規制により、運転手の拘束時間が減少し、運行効率の低下が懸念されています。

運送会社は人員の確保や配送ルートの見直しなど、事業運営の抜本的な改革を迫られることになります。また、規制遵守のためには荷主企業との協力関係の構築が不可欠となるでしょう。

運送コストの上昇は避けられず、物流を利用する各企業にも影響が及ぶと見られています。働き方改革を推進するには、物流業界全体で効率化に取り組む必要があります。トラック運転手の時間外労働規制は、物流を取り巻く環境に大きな変化をもたらすことになるのです。

下記の記事でも2024年問題に関して解説してますので、参考にしてください。

2024年問題のドライバーへのメリット3選！デメリットもあわせて解説！

2024年以降、トラック運転手の労働時間はどう変わる？

改正労働基準法の適用によるルールの変更点

2024年4月から適用される改正労働基準法により、トラック運転手の労働時間管理に関するルールが大きく変更されます。

まず、年間の時間外労働時間の上限が960時間に設定され、休日労働を含む時間外労働は単月100時間未満、複数月平均80時間以内に制限されます。1日の拘束時間も原則13時間以内とし、最大でも16時間までに抑えられることになります。

連続運転時間は4時間以内で、運転の中断は1回あたり10分以上、合計で30分以上取ることが必要です。また、1日の休息期間は目標11時間、最低でも9時間の確保が義務づけられました。

ただし、2人乗務の場合は車両内に適切な休息スペースがあれば、最大拘束時間を24時間に延長することが可能です。フェリーに乗船している時間は原則として休息時間とみなされ、下船時刻から勤務が開始されることになります。

改正労働基準法の適用により、トラック運転手の労働時間管理は厳格化されますが、過酷な長時間労働の防止と安全運行の確保を図ることが目的です。現場の実情を考慮しつつ、働き方改革を着実に進めていくことが求められています。

1日・月あたりの拘束時間や休息時間の変化

2024年4月の改正労働基準法の適用により、トラック運転手の1日および1か月あたりの拘束時間と休息時間は大きく変化します。

1日の拘束時間は原則13時間以内に制限され、延長は週に2回まで最大15時間とされます。ただし、車中泊を伴う業務の場合は週2回を上限に最大16時間までの延長が認められています。

休息期間については、継続11時間以上の確保を目標とし、最低でも9時間の付与が義務づけられました。車中泊の際は例外的に週2回まで8時間に短縮できますが、その場合は翌日の代償休息が必要です。

1か月の拘束時間は原則284時間以内に設定され、臨時的な場合に限り年6回まで310時間への延長が可能となります。ただし、この臨時延長が認められるのは1か月の時間外・休日労働が100時間未満の場合だけです。

改正法の適用により、トラック運転手の長時間拘束が是正され、十分な休息時間の確保が徹底されることになります。過酷な労働環境の改善につながる重要な施策だと言えるでしょう。

年間時間外労働の上限について

2024年4月よりトラック運転手に適用される時間外労働の上限は、年間960時間に設定されます。この上限規制の対象には、休日労働を含む全ての時間外労働が含まれ、違反した場合は運送会社に罰金などの罰則が科せられることになります。

また、月45時間を超える時間外労働は年6か月までに制限され、臨時的な場合であっても年間960時間の上限を超えることは認められません。

この時間外労働の上限規制は、運転手の健康確保と事故防止を主な目的としています。運送会社は適切な人員配置と効率的な運行管理により規制に対応する必要があり、荷主企業との協力関係の構築や物流の効率化も重要な課題となるでしょう。

年間960時間という上限は、国際的にも高い水準の規制値だと言えます。罰則を伴う強制力のある規制により、トラック運転手の長時間労働は確実に減少すると見込まれています。過酷な労働環境の改善に向けた大きな一歩となる施策だと言えるでしょう。

2024年問題への企業の対応と課題

ドライバー不足に伴う人材確保の難化

運送業界では長年にわたり深刻なドライバー不足が続いており、人材の確保が大きな課題となっています。長時間労働や低賃金などの労働環境の問題から、若者のトラック運転手離れが進む一方、高齢化に伴うベテランドライバーの大量退職により、人手不足に拍車がかかっているのです。

働き方改革による労働時間の削減は、ドライバー1人あたりの輸送能力低下を招く恐れがあります。人材不足を補うため、女性ドライバーの積極採用・育成に乗り出す企業も増えつつあります。外国人労働者の受け入れ拡大など、多様な人材の活用も検討課題となっています。

ドライバーの処遇改善や働き方改革は、単なる法令遵守の問題ではなく、人材確保の面でも重要な取り組みだと言えます。将来的には自動運転技術などによる物流の省人化も期待されていますが、当面は人材の安定的な確保が運送業界の喫緊の課題となるでしょう。

下記の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてください。

2024年6月15日 2024年問題でドライバー不足が加速？業界の未来とキャリアの希望を探る

運送コストの増加と長時間労働の是正

働き方改革によるトラック運転手の労働時間短縮は、運送コストの上昇につながることが避けられません。人件費の増加や車両の稼働率低下など、様々な要因がコストアップを招くためです。

運送会社は価格転嫁や生産性向上によるコスト吸収を迫られることになりますが、長時間労働の是正には荷主企業の理解と協力も不可欠です。荷待ち時間の削減や積み込み作業の効率化など、荷主側の対応も求められています。

トラックの共同配送やモーダルシフトの推進により、輸送の効率化を図る動きもありますが、運送コストの上昇は物流を利用する各企業の経営にも影響を及ぼします。サプライチェーン全体でコスト増を吸収し、効率的な物流体制を構築することが急務となっているのです。

運送業界の働き方改革は、コスト面での課題を抱えていますが、関係各所の協力と知恵の結集により、持続可能な物流の実現につなげていく必要があるでしょう。