個人タクシーの年齢制限は75歳まで！制限の根拠と働き続ける方法を解説

個人タクシードライバーとして長く働くためには、75歳未満という年齢制限を理解し、それを見据えたキャリアプランを立てることが重要です。この記事では、個人タクシーの年齢制限の現状と課題、制限の根拠となる法律や通達、年齢制限後の働き方などについて詳しく解説します。

個人タクシーの年齢制限とは？

個人タクシーには国土交通省により年齢制限が定められています。以下で詳しく解説します。

個人タクシーの年齢制限の概要

個人タクシーには年齢制限があり、現在は75歳未満と定められています。この年齢制限は、平成6年に国土交通省が設けたものです。具体的には、個人タクシー事業の許可申請ができる年齢が65歳までとなり、その後の事業許可の更新は1年、2年、3年、5年ごとに行われ、事業許可の更新ができる最後の年齢が75歳までとなっています。

参考：国土交通省「一般乗用旅客自動車運送事業（１人１車制個人タクシーに限る。）の申請に対する処分に関する処理方針」

ただし、制限が設けられた以前に開業していたドライバーには適用されないため、75歳以上の個人タクシードライバーも存在します。

年齢制限の根拠となる法律と国交省の通達

個人タクシーの年齢制限は、道路運送法とタクシー業務適正化特別措置法に基づいています。道路運送法では、一般乗用旅客自動車運送事業の許可基準として、事業を適確に遂行するための経済的基礎や、事業を健全かつ適切に遂行するための能力を有していることが求められています。
また、国土交通省は平成6年に「一般乗用旅客自動車運送事業の運転者の選任に関する特例について」という通達を出し、個人タクシー事業者の年齢制限を設けました。この通達では、65歳以上の運転者については、一定の要件を満たした場合にのみ選任できると定められています。

なぜ個人タクシーに年齢制限があるのか

個人タクシーに年齢制限が設けられている理由は、主に高齢ドライバーの事故を防ぐためです。以下で詳しく解説します。

高齢ドライバーの事故リスクと安全性への配慮

個人タクシーに年齢制限が設けられた背景には、高齢ドライバーによる事故リスクの増加があります。加齢に伴い、身体機能や認知機能が低下することで、事故に遭うリスクが高まります。特に、タクシーは乗客の安全を預かる公共交通機関であるため、ドライバーの安全運転能力は非常に重要です。
国土交通省が個人タクシーの年齢制限を設けたのは、高齢ドライバーによる事故を防ぎ、乗客の安全を確保するためです。年齢制限により、一定の年齢を超えた個人タクシードライバーは、定期的に適性検査を受けることが義務付けられ、安全運転能力の確認が行われます。

年齢制限に対する個人タクシー業界の反応

個人タクシー業界では、年齢制限に対して賛否両論があります。年齢制限により、ベテランドライバーの経験や知識を活かせなくなるという意見がある一方で、安全性の確保を重視する声もあります。
また、タクシー業界全体では慢性的な人手不足が問題となっており、年齢制限によってドライバー不足に拍車がかかるのではないかという懸念もあります。実際に、75歳を超えても現役で働いている個人タクシードライバーは少なくありません。
ドライバーの安全性を確保しつつ、経験豊富なベテランドライバーの活用も考慮した、バランスの取れた制度設計が求められています。

個人タクシー運転手の上限年齢を「80歳」に引き上げる政府方針について

政府は2023年9月に個人タクシー運転手の上限年齢を現行の75歳未満から80歳未満に引き上げる方針を示しました。ここでは、その背景や目的、引き上げが実施された場合の影響・課題について解説します。

上限年齢引き上げの背景と目的

政府は2023年9月に個人タクシー運転手の上限年齢を現行の75歳未満から80歳未満に引き上げる方針を示しました。この方針は、高齢化に伴うドライバー不足の解消と、高齢者の就労機会の拡大を目的としています。
タクシー業界では、慢性的なドライバー不足が深刻化しています。特に、地方都市では、人口減少と高齢化により、新規のドライバー確保が困難な状況です。こうした中で、経験豊富なベテランドライバーの活用は、サービスの質の維持と安定供給に不可欠だと考えられています。
また、高齢者の就労意欲は高く、健康状態が良好であれば、80歳を超えても十分に働くことができます。個人タクシーは、自営業として、自分のペースで働くことができるため、高齢者の就労ニーズに合致しています。上限年齢の引き上げは、高齢者の社会参加の促進にもつながると期待されています。

引き上げによる影響と課題

個人タクシーの上限年齢引き上げには、メリットだけでなく、課題もあります。まず、安全性の確保が最大の課題です。75歳以上のドライバーについては、現在でも適性検査が義務付けられていますが、80歳までの延長に伴い、より厳格な健康管理と安全運転の指導が必要になります。
また、上限年齢の引き上げによって、個人タクシー業界内の競争が激化する可能性があります。新規参入が難しい状況下で、ベテランドライバーの増加は、若手ドライバーの収入減につながる恐れがあります。世代間のバランスを考慮した制度設計が求められます。
さらに、個人タクシーの運賃設定や事業継承など、業界全体の構造的な問題への対応も必要です。高齢ドライバーの増加だけでなく、サービスの質の維持と向上、事業の持続可能性を総合的に考慮した政策が求められています。

参考記事：個人タクシー運転手の上限年齢を「80歳」に引き上げる政府方針の課題　基礎研ＲＥＰＯＲＴ（冊子版）12月号[vol.321]|ニッセイ基礎研究所

個人タクシー運転手の年齢制限を破った場合の罰則について

個人タクシーの運転手の年齢制限は現状75歳未満ですが、制限を破ってしまったらどうなるのでしょうか。

ここでは、具体的な罰則を解説します。

年齢制限違反の事例と罰則の内容

個人タクシーの年齢制限は、道路運送法に基づく許可基準の一部として定められています。そのため、年齢制限に違反して事業を継続した場合、許可基準違反として罰則の対象となります。
具体的な事例としては、75歳を超えてもなお、事業許可の更新を行わずに個人タクシーを営業したケースが挙げられます。この場合、道路運送法違反として、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
また、事業許可の更新時に、年齢制限を超えているにもかかわらず、虚偽の申請を行った場合も、同様の罰則が適用されます。

安全運転と法令順守の重要性

個人タクシードライバーには、乗客の安全を最優先に考え、安全運転に徹することが求められます。年齢制限は、ドライバーの安全運転能力を確保するための重要な基準です。
年齢制限に違反することは、法令順守の意識の欠如を示すだけでなく、乗客の安全を脅かす行為にもつながります。事故が発生した場合、ドライバーの責任が問われるだけでなく、個人タクシー業界全体の信頼を損なうことにもなりかねません。
個人タクシードライバーは、自らの健康状態を適切に管理し、定期的な適性検査を受けることで、安全運転能力を維持していく必要があります。そして、年齢制限をはじめとする法令を順守し、プロドライバーとしての責任を果たしていくことが求められています。

年齢制限後も個人タクシーを続ける方法

法人タクシーへの転職

個人タクシーの年齢制限を迎えた後も、タクシードライバーとして働き続けるための選択肢の一つが、法人タクシーへの転職です。法人タクシーの多くは、75歳までの雇用を保証しています。中には、80歳までの継続雇用制度を設けている会社もあります。
個人タクシーから法人タクシーへの転職は、安定した収入と福利厚生を得られるメリットがあります。一方で、勤務時間や乗務地域など、働き方の自由度は減少します。自営業から被雇用者になることで、ライフスタイルの変化も求められます。
転職先の選定に当たっては、勤務条件だけでなく、安全運転に対する会社の姿勢や教育体制なども確認することが重要です。個人タクシーで培った経験を活かしつつ、会社の方針に沿った運転を行うことが求められます。

個人タクシードライバーに必要な資格と許可

二種免許の取得と更新

個人タクシードライバーとして働くためには、まず第二種運転免許（二種免許）の取得が必要です。二種免許は、タクシーやバスなど、旅客を運送する業務に必要な免許で、第一種運転免許（普通自動車免許）とは別に取得する必要があります。
二種免許の取得には、一定の要件を満たす必要があります。普通自動車免許を取得してから3年以上経過していること、二種免許の適性検査に合格することなどが求められます。二種免許の養成期間は、教習所によって異なりますが、おおむね2～3ヶ月程度です。
二種免許の有効期間は3年間で、更新時には適性検査と講習の受講が義務付けられています。75歳以上のドライバーは、更新期間が2年に短縮され、認知機能検査も義務化されています。

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事業許可の申請と更新

個人タクシーを営業するには、二種免許の取得だけでなく、国土交通大臣の事業許可を得る必要があります。事業許可の申請は、タクシー業務適正化特別措置法に基づいて行われます。
事業許可の申請には、一定の要件を満たす必要があります。二種免許を取得していること、一定の資金力があること、法令順守の誓約書を提出することなどが求められます。また、地域によっては、事業許可の発行枠が限られているため、申請が抽選になる場合もあります。
事業許可の有効期間は、新規許可の場合は2年間、更新の場合は3年間です。ただし、65歳以上のドライバーは、更新期間が最長5年から最長3年に短縮されます。75歳までが事業許可の更新ができる最終年齢とされているため、それまでに何度か更新の手続きが必要になります。
事業許可の更新時には、道路運送法に基づく基準に適合しているかどうかが審査されます。安全運転の実績や健康状態、事業の収支状況などが評価の対象となります。
個人タクシードライバーとして長く働くためには、二種免許と事業許可の両方を適切に更新し、安全運転と法令順守を徹底することが求められます。プロドライバーとしての自覚を持ち、日々の業務に取り組むことが重要です。

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まとめ：年齢制限を見据えながら個人タクシーを営業しよう

年齢制限を見据えたキャリアプランの必要性

個人タクシードライバーとして長く働くためには、年齢制限を見据えたキャリアプランを立てることが重要です。現行の制度では、75歳が事業許可の更新ができる最終年齢とされているため、それまでにどのように働くかを考えておく必要があります。

具体的には、60歳代で個人タクシーの事業許可を取得し、70歳代前半までは自営業者として働くことを目指すのが一般的なキャリアプランと言えます。70歳代後半になったら、法人タクシーへの転職や、優良ドライバーとしての特例申請など、選択肢を検討する必要があります。
また、個人タクシーを引退した後のことも考えておくことが大切です。年金収入やその他の収入源、健康管理の方法など、引退後の生活設計をしっかりと立てておくことが求められます。

個人タクシーのやりがいと働き方の魅力

個人タクシーの仕事は、自営業ならではのやりがいと魅力があります。自分のペースで働けること、お客様との交流を通じて地域に貢献できることなどが、個人タクシードライバーの醍醐味だと言えます。
特に、ベテランドライバーとなると、地域の道路事情に精通し、お客様のニーズに的確に応えられるようになります。長年の経験を活かして、質の高いサービスを提供できることは、大きなやりがいにつながります。

また、個人タクシーは、自分の健康状態や体力に合わせて、働く時間や日数を調整できるのも魅力の一つです。フルタイムで働くことが難しくなっても、短時間勤務や隔日勤務など、柔軟な働き方が可能です。
ただし、自営業である以上、収入の安定性は保証されません。営業力や経営能力が求められるため、それぞれのドライバーが自分に合った働き方を見つけていく必要があります。

個人タクシーの年齢制限は、ドライバーのキャリアプランに大きな影響を与えます。制限を見据えつつ、いかにやりがいを持って働き続けられるかが、ベテランドライバーに求められる課題だと言えるでしょう。安全運転と法令順守を徹底しながら、プロドライバーとしての誇りを持って仕事に取り組むことが、個人タクシーの未来を支えていくのではないでしょうか。