統括運行管理者とは？その役割や運行管理者との違いを完全解説！

統括運行管理者は、運送会社の安全運行を支える重要な役割を担う責任者です。複数の運行管理者を管理し、会社全体の安全運行体制を構築・維持することが求められます。この記事では、統括運行管理者の役割や仕事内容、なり方、やりがいについて詳しく解説します。

統括運行管理者とは？

運行管理者を管理する責任者

統括運行管理者とは、運送会社において複数の運行管理者を統括・管理する責任者のことです。事業用自動車の運行に関する業務を総括し、安全運行の確保と法令順守の徹底を図ることがその主な役割です。

運行管理者が車両の点検・整備管理やドライバーの勤怠管理などの個別業務を担うのに対し、統括運行管理者はそれらの業務全体を俯瞰し、運行管理業務の適切性を確保することが求められます。会社の安全運行体制の構築と維持に関する最終責任を負うのが統括運行管理者だと言えます。

一定台数の自動車保有で選任義務発生！

一定台数以上の事業用自動車を保有する運送会社には、法律で統括運行管理者の選任が義務付けられています。トラックの場合は車両数が300台以上、バス・タクシーの場合は200台以上の事業所で選任が必要です。

この法的義務は、大規模な運送事業者における安全管理体制の強化を目的としたものです。事故防止と法令順守の徹底のために、運行管理業務を統括・監督する立場の設置が不可欠だという考えの下、統括運行管理者制度が設けられました。

運輸業界において、安全はサービスの根幹をなすものです。統括運行管理者は、その安全を確保するための要（かなめ）の役割を担っていると言っても過言ではありません。

統括運行管理者の4つの仕事内容

日々の安全運行管理業務

統括運行管理者の日常業務の中心は、運行管理者の業務管理です。各運行管理者から定期的に業務報告を受け、問題点や課題を把握します。そして改善に向けた具体的な指示を与え、PDCAサイクルを回していきます。

また、全社的な運行計画の策定や、ドライバーの勤務シフトの決定なども統括運行管理者の重要なタスクです。限られた人員を適材適所に配置し、効率的な運行を実現するためのマネジメントが求められます。

運転者の日々の健康状態のチェックや、アルコール検知器を使った飲酒運転防止の取り組みの徹底なども、統括運行管理者が主導します。安全運行の基盤となる施策を着実に実行に移すことが使命だと言えるでしょう。

ドライバーの指導・教育

統括運行管理者にとって、ドライバー教育は極めて重要な職責です。単発的・表面的な研修ではなく、体系的かつ実践的な教育プログラムを立案し、確実に実施していくことが求められます。

新人ドライバーへの基礎教育はもちろん、ベテランドライバーに対するフォローアップ研修や、事故防止のための特別講習など、ドライバーのスキルと安全意識を高めるための施策を複合的に組み合わせることが肝要です。

研修の実施後は、その効果を評価・検証し、次の教育計画に反映させていく必要もあります。ドライバー一人ひとりの成長を促し、会社全体の安全運転レベルを引き上げていくことが、統括運行管理者に課せられた使命だと言えます。

社内全体のコンプライアンスの徹底

運送業界は様々な法規制の下で事業を行っており、コンプライアンスの徹底は極めて重要なテーマです。統括運行管理者は、関連法令の知識を自ら深めると同時に、社内の理解度向上にも努めなければなりません。

運転者に対する法令順守の指導はもちろん、社内のコンプライアンス研修の企画・実施なども統括運行管理者の重要な役割です。会社としての法令順守姿勢を明確に示し、全従業員に浸透させていく必要があります。

また、行政機関による監査の立ち会いや、行政処分を受けた際の改善報告書の作成なども、統括運行管理者の職務に含まれます。会社の安全運行体制の適切性を行政にアピールし、信頼を得ることも大切な使命の一つだと言えるでしょう。

事故発生時の対応

万が一事故が発生した場合、統括運行管理者は迅速かつ的確な対応を取る必要があります。被害の拡大防止と二次事故の防止を最優先しつつ、事故の全容を把握することが求められます。

警察や保険会社などの関係機関との連絡・調整、社内の情報共有と対応方針の決定など、統括運行管理者の指揮の下で組織的に動くことが重要です。また、事故の原因究明には積極的に関与し、再発防止策を立案・実行に移すことも統括運行管理者の大きな役割だと言えます。

事故を個別の出来事で終わらせるのではなく、会社の安全運行体制を見直すきっかけと捉えることが肝心です。事故の教訓を安全マネジメントにしっかりと活かしていく姿勢が、統括運行管理者には強く求められています。

統括運行管理者になる方法

必要な資格と要件

統括運行管理者になるためには、以下の全ての要件を満たす必要があります。

このうち運行管理者資格は、国土交通大臣認定の講習を受講し、筆記試験に合格することで取得できます。受験資格は21歳以上で、2年以上の実務経験か基礎講習の修了が必要です。

下記の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

2024年6月19日 運行管理者試験の合格率が低い理由とは？合格するポイントを徹底解説

選任までの過程

統括運行管理者への道のりは、まず運行管理者としてのキャリアをスタートさせるところから始まります。

地道な実務経験の積み重ねが、統括運行管理者への近道だと言えます。日々の業務の中で、リーダーシップを発揮する機会を自ら見つけ、積極的に挑戦していくことが大切です

統括運行管理者のやりがい

会社の安全運行を支える誇り

統括運行管理者は、会社の安全運行を支える重要な役割を担っています。自社のドライバーと車両を適切に管理し、重大事故の発生を未然に防ぐことに成功したとき、大きなやりがいを感じられるはずです。

日々の地道な業務の積み重ねが、会社の安全実績につながっていると実感できたとき、統括運行管理者冥利に尽きると言えるでしょう。「安全はサービスの基盤」という考えの下、会社の安全文化を醸成していくことに誇りを持てるはずです。

ドライバーの成長を支援する喜び

統括運行管理者のもう一つの大きなやりがいは、ドライバーの成長を支援できることです。安全運転の指導はもちろん、ドライバーのキャリア形成をサポートすることも重要な役割だからです。

新人ドライバーが一人前に成長する過程を見守り、時には厳しく指導することで、プロのドライバーへと育てていく。そうしたドライバー一人ひとりの成長の過程に関われることは、統括運行管理者ならではの喜びだと言えます。

自らの知識と経験を、次の世代のドライバーに伝えていくことで、会社の安全運行体制をより強固なものにしていく。そんな長期的な視点に立って、人材育成に取り組めるのも、統括運行管理者の大きなやりがいの一つです。

まとめ

統括運行管理者は、運送会社における安全運行の要として、極めて重要な役割を担っています。運行管理者を統括し、会社全体の安全マネジメントを推進する責任者だと言えます。

その仕事内容は多岐に渡り、高度な専門知識とマネジメント能力が求められます。ドライバーの教育・指導から、行政対応、事故防止対策の立案まで、安全運行に関する幅広い業務をこなす必要があります。

統括運行管理者になるためには、運行管理者としての十分な実務経験と、リーダーシップを発揮する機会の積み重ねが不可欠です。日々の地道な努力が、いつかは統括運行管理者への道を拓くことになるはずです。

統括運行管理者の仕事は責任が重い分、会社の安全運行を支えているという大きなやりがいがあります。次世代のドライバーの育成を通じて、会社の将来を支えていく喜びも味わえるでしょう。

物流業界の安全を支えるキーパーソンとして、統括運行管理者に求められる役割はますます大きくなっています。プロのドライバーを目指す人にとって、統括運行管理者は目指すべき将来の姿の一つだと言えるのではないでしょうか。