介護タクシーは儲からない？実は需要増で参入チャンス！売上拡大のコツも紹介

超高齢社会を迎え、要介護者の移動ニーズが高まる中、介護タクシーが注目を集めています。介護タクシーは一般のタクシーと異なり、要介護者の特性に合わせたサービスを提供できる点が強みです。参入障壁が比較的低く、需要の拡大が見込まれる有望市場ですが、一方で収益性の確保や事業リスクへの備えも重要となります。本記事では、介護タクシー業界の現状と将来性、開業のメリットやリスク、収益力アップのポイントなどを詳しく解説します。

介護タクシーとは？

介護タクシーとは高齢者や障がい者など、移動が困難な方のために利用されるタクシーサービスのことです。

ここでは、似た存在である福祉タクシーと比較しながら、介護タクシーについて解説します。

介護タクシーは訪問介護サービスの1種

介護タクシーは、要介護者や要支援者の通院や外出時の移動を支援する訪問介護サービスの一種です。単なる送迎だけでなく、乗降時の介助や、必要に応じて自宅内や病院内での移動のサポートも行います。

介護タクシーと福祉タクシーの違い

介護タクシーと似た存在に福祉タクシーがありますが、両者には大きな違いがあります。介護タクシーのドライバーは介護職員初任者研修などの資格を持ち、介助を提供できます。一方、福祉タクシーのドライバーは介助を行いません。

介護タクシーと福祉タクシーの比較表

介護タクシーと福祉タクシーの違いを比較表にすると下記の通りです。

介護タクシーは介護保険の適用がありますが、福祉タクシーはありません。

介護タクシー業界の需要は？高齢化で今後も増加見込み

介護タクシーの需要は今後伸びるのでしょうか。市場のデータを用いながら詳しく解説します。

高齢化の進展と要介護者数の推移

引用：令和３年度 介護保険事業状況報告（年報）のポイント

我が国の高齢化はますます進展しており、それに伴い介護を必要とする高齢者の数は年々増加しています。2022年3月末の要介護（要支援）認定者数は690万人でしたが、2025年には700万人を超える見込みです。また、障がい者の数も増加の一途をたどっており、2020年時点の身体障害者手帳所持者数は536万人に上ります。

介護タクシーの現状の利用状況と将来予測

増大する移動制約者の外出ニーズに対し、介護施設等の送迎車両だけでは対応しきれないのが実情です。ドアtoドアでの移動支援が可能な介護タクシーの重要性は日に日に高まっています。2020年の時点で全国の介護タクシー事業者数は約1万2千社ありますが、高齢化のスピードに需要の伸びが追い付いていないのが課題です。
国土交通省では、2025年までに介護タクシーの導入台数を現在の2.2倍となる90,000台とする目標を掲げており、今後ますます参入の余地が広がると予想されます。超高齢社会の進展により、介護タクシーは今や不可欠の存在として市場の拡大が見込まれています。

介護タクシーの収益性は？儲けのカラクリに迫る

介護タクシーの売上構造や利益率について詳しく解説します。

介護タクシーの売上構造と主な経費

介護タクシー1台あたりの月間売上は、平均的に20～50万円程度と言われています。需要が逼迫している地域では、効率的な運行により50万円を優に超えるケースもあるようです。売上の基本は運賃収入ですが、一般タクシーと異なり運賃設定が自由なのが特徴です。基本運賃＋距離制の組み合わせで設定するのが一般的な方法となっています。
主な経費としては、車両の減価償却費や燃料代、車検・メンテナンス費用等の他、ドライバーの人件費が大きな割合を占めます。固定費を抑えつつ、如何に効率的に運行し稼働率を高めるかが、収益を左右する鍵となります。

1台あたりの平均的な売上と利益率

前述の通り、介護タクシー1台の月商は20～50万円程度が相場です。車両を2～3台に増車できれば、ドライバーの効率的なシフト配置等により、1台あたりの売上をさらに伸ばすことも可能でしょう。
気になるのは利益率ですが、人件費を含めた損益分岐点が1運行あたり6,500円程度と試算されます。つまり、平均単価7,000円以上を実現できれば、月間売上の40％程度は利益として見込めるという計算になります。一般のタクシー事業に比べ、比較的少ない車両数でも高い収益性が期待できるのが介護タクシーの魅力と言えそうです。

【ポイント3選】介護タクシーは儲かる仕組みを作ることが大切

介護タクシーの売上を拡大するには儲かる仕組みづくりが重要です。ここでは3つのポイントを解説します。

1.単価設定と稼働率管理の重要性

介護タクシー業界は今後も需要の拡大が見込まれる有望市場ですが、同時に新規参入業者の増加により価格競争に陥るリスクもあります。採算度外視の過当競争に巻き込まれないためにも、適正な単価設定を堅持することが重要です。加えて、効率的な配車オペレーションにより平均稼働率を高め、1運行・1台あたりの収益性を維持することが欠かせません。

2.法人契約や提携先の開拓

介護施設や医療機関、自治体等との安定的な法人契約を確保することで、収益基盤を強化することができます。定期的な運行を請け負うことで稼働率アップにもつながります。地域の関連事業者との太いパイプを構築し、リピート利用を促進することが重要です。また、利用者からの口コミでの顧客獲得は、広告宣伝費を抑えつつ売上を伸ばす有効な手段となります。

3.介護保険外サービスの展開

介護保険適用の運賃だけでなく、保険対象外の「自費サービス」のメニューを充実させることも重要な戦略の一つです。通院等の介護保険対象外の移動ニーズに柔軟に対応することで、顧客単価の引き上げを図ることができます。
例えば、駅や空港への送迎、買い物同行、美容院の送迎、墓参りの付き添いなど、要介護者の多様なニーズに合わせたオプションサービスを用意しておくと良いでしょう。保険外の上乗せサービスを組み合わせることで、１運行あたりの収益性を大きく改善することが可能です。
要介護者のニーズを的確に捉え、きめ細やかな対応力を強みに差別化を図ることが、利用者のリピート率向上と売上アップのカギを握ります。「儲かる仕組み」を構築するには、単価設定から稼働率管理、営業戦略まで総合的にマネジメントしていくことが求められるのです。

介護タクシーの開業が難しくない理由4つ

介護タクシーは一般タクシーに比べると開業のハードルが低いです。その理由について解説します。

1.一般タクシーと比較した新規免許発行の容易さ

介護タクシーは一般のタクシー事業に比べ、開業のハードルが格段に低いことが大きな魅力です。まず、一般タクシーの新規参入には現在、厳しい規制が敷かれています。特に大都市部では新規免許の発行は事実上ストップしており、実質的に既存事業者からの免許譲渡が唯一の参入ルートとなっています。
一方、介護タクシーの場合は事業用自動車運送事業許可さえ取得できれば新規参入が可能で、免許譲渡コストもかかりません。加えて、1台からでも開業できるため、初期投資を大幅に抑えられるのも大きなメリットと言えるでしょう。

2.必要な資格は普通二種免許または一種免許のみ

介護タクシー開業に必要な資格は、一般タクシー同様に普通二種免許または一種免許の取得が必須となります。さらに、介護に関する基礎的な知識や技術を証明する「介護職員初任者研修」や「旧ホームヘルパー2級」などの資格を取得しておくことで、開業時の信頼度アップにつながります。

介護タクシーの開業に必要な資格については、下記の記事も合わせてご確認ください。

2024年7月2日 介護タクシーの資格まとめ！必須資格すべてと最短で取得する方法を解説！

3.初期投資は500万円程度で一般タクシーの開業より安い

気になる初期投資ですが、1台からの開業であれば500万円程度の資金があれば十分でしょう。主な内訳は、中古の介護タクシー専用車両（ストレッチャー付き）で250～400万円、二種免許の取得費用40万円、開業諸経費で50万円程度となります。一般タクシーの場合、車両が500万円程度、免許譲渡費用に250万円前後かかることを考えると、介護タクシーの初期投資の低さは際立っています。

4.自治体の支援制度や助成金が活用できる

介護タクシーは地域の社会インフラとして重要な役割を担うため、自治体によっては開業支援の補助金制度を用意している場合があります。例えば、車両購入費の一部を助成したり、二種免許取得費用の補助を行う制度などです。
また、東京都や神奈川県など一部の自治体では、介護タクシー開業希望者向けのセミナーを開催し、運行ノウハウや接遇の基本、関連法規などを学べる機会を提供しています。開業前の準備段階で、こうした自治体の支援制度を上手に活用することで、初期費用の節約とスムーズな開業につなげることができるでしょう。

介護タクシーの開業リスクと対策

介護タクシーの開業にはもちろんリスクも伴います。しかし、事前にリスクを踏まえた対策を講じることで、リスクを最大限抑えて経営することが可能です。以下で詳しく解説します。

需要予測の甘さと車両の遊休リスク

介護タクシー業界は将来性が期待される一方で、需要予測を誤るリスクも伴います。特に地方都市などでは、高齢化率が高いものの利用者の絶対数が少なく、車両を持て余すケースも見られます。開業前の入念な市場調査が不可欠と言えるでしょう。
地域の人口動態や競合事業者の状況、介護施設や病院の分布状況などを分析し、適正な車両台数を見極めることが重要です。当初は１台から始め、徐々に増車していくのが賢明な選択と言えます。繁閑の波に合わせて車両をフル稼働できる体制づくりを心がけましょう。

ドライバー確保の難しさと定着率の問題

介護タクシーのドライバーには、単に車を運転するだけでなく、要介護者への細やかな配慮と適切な介助技術が求められます。人あたりの良さや接遇スキルの高さも重要な要件となるため、なかなか適任者が見つからないのが実情です。
人材の定着率を高めるには、計画的な求人活動と充実した社内教育が欠かせません。ドライバー候補の掘り起こしを常に行いつつ、採用後の接遇研修や介助技術の指導を丁寧に行うことで、早期離職を防ぐ工夫が必要です。専任の指導担当者を置くなど、人材育成を継続的に行える組織体制を整えることが理想的でしょう。

事故やトラブル発生時の対応と備え

介護タクシーの利用者は高齢者や障がい者が中心のため、移動中の事故リスクは避けられません。また、認知症の方のtransportの際のトラブルなど、一般のタクシーとは異なる様々な場面が想定されます。
トラブルを最小限に抑え、万が一の場合にも適切に対応できる備えを整えておくことが大切です。具体的には、安全運転の徹底はもちろん、介助時の事故防止マニュアルを整備したり、ドライバー向けの定期的な研修を実施することが求められます。また、利用者に対する賠償リスクに備えて、十分な補償内容の保険に加入しておくことも重要な備えの一つです。

下記の記事も合わせてご確認ください。

2024年7月2日 【介護タクシー開業の落とし穴】失敗しない5つのポイントを解説！

介護タクシー開業の流れは？準備から運営まで

事業計画の立案とマーケティング

介護タクシーを開業するには、まず事業コンセプトを明確にし、具体的な事業計画を練り上げることから始まります。提供するサービスの特徴や差別化ポイント、利用対象者、営業エリアなどを整理します。
また、綿密な収支シミュレーションを行い、初期投資や運転資金、損益分岐点などを試算することが不可欠です。開業後の営業活動では、地域の介護施設や病院、ケアマネージャーなどに積極的に挨拶周りを行い、リレーションを構築することが重要となります。

車両の選定と必要な設備・備品

事業コンセプトが固まったら、具体的な運行車両の選定を進めます。利用者の安全性と乗り心地を第一に、ストレッチャーやスロープの装備など、必要な改造を施すことになります。新車購入か中古車の活用かは、予算や車両の状態などを見極めて判断します。
車内には、利用者の乗降をサポートする手すりや、車いすの固定ベルトなどの備品が必要不可欠です。また、ドライバーとの連絡手段となる無線機や、運行管理に必要なタブレット端末なども整える必要があります。クレジットカード決済の導入も検討すべきでしょう。

人員の確保とスタッフ教育

サービス品質の維持・向上には、優秀なドライバーの確保と継続的な教育が欠かせません。求人広告の出稿とともに、地元のタクシー会社からのスカウトや、介護職からの転職者獲得など、多様な採用チャネルを活用することが求められます。
採用後は、接客マナーや安全運転、介助技術などの研修を定期的に実施し、スタッフのスキルアップを図ることが重要です。ロールプレイングを取り入れるなど、実践的な指導を心がけましょう。

運輸局への申請と許可取得のプロセス

介護タクシーの運行には、管轄の運輸局から「福祉輸送事業者」としての許可を受ける必要があります。申請には、事業計画書や資金計画書、車両の運行管理体制図など、各種書類の提出が必要です。
標準処理期間は申請から2～3ヶ月程度とされていますが、不備の指摘などで許可が下りるまでに時間を要することも珍しくありません。スケジュールに余裕を持って取り組むとともに、専門家の支援を受けることで、円滑な申請を進められるでしょう。

まとめ：介護タクシーで安定収益を目指そう

超高齢社会の進展とともに、介護タクシーの需要は今後ますます高まることが予想されます。参入障壁が比較的低く、少ない初期投資で開業できるのは大きな魅力と言えるでしょう。地域に密着した身近な移動手段として、利用者の生活の質の向上に寄与できるのも、このビジネスのやりがいにつながります。

一方で、介護タクシーを安定的な収益事業として運営していくには、単価設定や車両の稼働率管理など、経営面での工夫が欠かせません。サービス品質の維持・向上とともに、付加価値の高いオプションメニューの導入などにより、利用者単価のアップを図ることが重要です。

事故やトラブルといった潜在的なリスクにも十分な備えを行いつつ、地域に根差した営業活動によって利用者との信頼関係を築いていくことが求められます。介護タクシーの開業は、社会貢献と収益性を両立できるやりがいのある事業と言えるでしょう。移動弱者の足として、地域社会になくてはならない存在を目指してみてはいかがでしょうか。