バス運転手が不足している理由とは？原因と解決策も併せて完全解説！

バス業界は深刻な人手不足に直面しています。運転手の高齢化と若手の採用難により、安定的な輸送サービスの維持が困難になりつつあります。この記事では、バス運転手不足を引き起こす構造的な原因と、打開に向けた道筋を探ります。

バス業界の現状

バス業界は運転手の高齢化と人材不足に直面しています。長時間労働や低賃金といった厳しい労働環境がネックとなり、若者の就職先としての人気は低迷。イメージ改善と働き方改革が急務である一方、路線の維持が困難になるなど、地域公共交通の危機が深刻化しつつあります。

従業員の約25％以上が60代以上

バス業界は他業界と比べて従業員の高齢化が顕著に進んでいます。全産業平均では従業員に占める60代以上の割合が約12%なのに対し、バス業界ではその2倍以上の約25%を60代以上が占めています。今後10年間で40%を超えるベテランドライバーが定年退職を迎えると見込まれており、大量離職による人手不足の深刻化が懸念されています。
人口減少社会の中で、団塊世代の引退を機に急速に減少する運転手を補充するのは容易ではありません。バス事業者にとって、運転手の大量退職は安全運行とサービスの維持を脅かす重大な経営リスクと言えるでしょう。定年退職者数を上回る新規採用を継続して行うことが、バス業界の喫緊の課題となっています。

若手ドライバー不足

バス運転手不足に拍車をかけているのが、若年層の就職者減少です。大型二種免許保有者の実に9割以上が40代以上で、20代の保有者はわずか2%程度に留まります。
若者がバス運転手を敬遠する理由としては、「賃金の低さ」「長時間労働」「不規則な勤務」などが大きいと言われています。またSNSの発展によって悪いイメージが拡散されやすくなったこと、バス運転手の仕事のやりがいや魅力が十分に伝えられていないことなどもバスドライバー離れに起因していると考えられています。

バス運転手が不足している4つの理由

不規則シフトと拘束時間の長さ

バス運転手の労働環境は厳しいものが多く、それが離職率の高さにつながっています。1日の平均拘束時間は13～14時間にも及び、休憩を除いた実働時間は10時間程度。朝夕の交通ラッシュ時の増便や、深夜バスの運行など、勤務シフトは不規則です。始発から終電まで乗務することも珍しくありません。
こうした長時間拘束と不規則な勤務体系は、バス運転手の生活リズムを大きく乱すことにつながります。睡眠時間の確保が難しく、家族との時間も十分に取れないなど、私生活への悪影響は小さくありません。それでも土日祝日も休めるとは限らず、ワークライフバランスを保つのは容易ではないのが実情です。

長時間運転による負荷

長時間の連続運転は肉体的にも精神的にも大きな負荷がかかります。運転中は常に高い集中力を保ち続ける必要があるため、疲労は蓄積しやすくなります。休憩時間が十分に取れないと、居眠り運転のリスクも高まります。
また、乗客とのトラブル対応やクレーム処理など、精神的なストレスも大きな負担となります。バス運転は対人サービス業の側面もあるため、安全運転だけでなく、乗客への細やかな気配りも求められます。
厳しい勤務実態は健康被害のリスクにもつながります。便意を我慢せざるを得ない状況が常態化し、膀胱炎など泌尿器系の疾患を招くケースもあります。疲労によるヒューマンエラーを防止し、ドライバーが心身ともに健康に働き続けられる環境整備が急務だと言えるでしょう。運転負荷の軽減につながる最新機能を備えた車両の導入や、仮眠設備の拡充など、ハード・ソフト両面からの改善が求められます。

働き方改革が進まない

バス業界の働き方改革が遅れている背景には、業界の構造的な問題があります。全国のバス事業者の85%以上は中小企業で、大手に比べて経営基盤が脆弱なところが多いのです。
コストを抑えるため、正社員よりも非正規雇用の運転手を多く採用する傾向にあります。シフトが不安定な上、雇用も不安定となりがちです。将来への見通しが立てにくいことで、バス運転手を長く続けることへのモチベーションが保ちにくくなっています。
また、日々の運行で手一杯の中小事業者にとって、働き方改革に注力する余裕がないのも実情です。運転手の負担軽減のための投資も、なかなか踏み切れないのが現状と言えるでしょう。行政の支援制度などを有効活用しながら、一歩ずつ改善に取り組む必要があります。

バス業界のイメージの悪さ

バス運転手不足の背景には、職業のイメージの悪さが大きく影響しています。バス運転手は、お客様の安全を預かる重要な役割を担っているにも関わらず、社会的な認知度や評価は必ずしも高くありません。
その原因の1つが、メディアによる負のイメージの助長です。バス事故のニュースが大々的に報道される一方、日々の安全運行に尽力するドライバーの献身的な働きぶりが脚光を浴びることは稀。ともすれば、「ただハンドルを握っているだけ」「自動運転で要らなくなる仕事」など、ドライバーの専門性を軽視するような風潮すら見受けられます。
人々の意識の中に根付いたバス運転手へのネガティブなイメージ。それが、若者がこの仕事を避ける大きな要因になっているのは間違いありません。「3K」のレッテルを剥がし、バス運転手の社会的地位を高めることは、人材不足の解消に直結する重要な課題になっています。

下記の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

2024年6月19日 バス運転手の仕事はきつい？その4つの理由やメリット等徹底解説！

3. バス運転手不足解消に向けた5つの施策

デジタル技術の活用で残業を削減

運転手の負担軽減には、勤務シフトの工夫による拘束時間の短縮や、運行以外の業務の効率化が欠かせません。運行管理システムの導入などデジタル技術の活用で、無駄な残業を削減。法令順守の徹底とともに、ドライバーが心身ともに健康に働ける環境整備を急ぐ必要があります。

他産業との賃金格差の是正

バス運転手の賃金水準の低さは、若者の職業選択の大きな障壁となっています。運転手の安定的な確保には、他産業との賃金格差の是正が急務。ベテランのキャリアを給与で適正に評価する制度の導入や、家族手当など各種手当の充実も検討課題です。事業の安定化を図りつつ、職業の魅力を高める抜本的な待遇改善が求められます。

下記の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

2024年6月19日 バス運転手の年収を徹底解説｜路線や観光バスの種類、経験年数による給料の違い

SNSの活用など若者向けに採用強化

若年層の採用強化は喫緊の課題です。これまでの方法に加え、SNSの活用など若者に訴求力のある採用手法の開拓が必要不可欠。幅広い層の意欲や適性を見極める入社後の研修制度など、採用の入口を広げる仕組み作りにも注力すべきです。女性ドライバーの積極採用や、シニア層の経験を生かした再雇用など、多様な人材の活躍推進も重要な鍵を握ります。

教育・研修制度の充実

即戦力となる人材の育成には、充実した研修制度の整備が欠かせません。運転技術に加え、安全意識の徹底や接客マナーの習得など、バス運転手に求められるスキルは多岐にわたります。ベテランから若手への知識・技能の継承の場を設けることも重要。加えて、キャリアアップのための資格取得支援など、スキルアップへの動機づけにもつなげていくことが求められます。

SNSなどを通じてバス業界のイメージ刷新

「低賃金」「過酷」というネガティブなイメージを払拭し、バス運転手の仕事の魅力を広く伝えていくことが重要です。SNSなどを通じ、バスの安全・安心を支える縁の下の力持ち的な存在感をアピール。社会を支えるエッセンシャルワーカーとしての誇りを前面に打ち出していくべきでしょう。あわせて、ドライバーが燃料電池車など先進技術に触れる機会の創出など、仕事のやりがいを高める取り組みも求められます。

バス業界の変革なくして、持続可能な公共交通の実現はあり得ません。バス運転手という仕事の社会的価値を高め、「なりたい」と憧れられる職業に変えていく。業界を挙げたイメージ刷新への取り組みが何より重要だと言えるでしょう。

まとめ

バス運転手の慢性的な不足は、わが国の公共交通ネットワークの維持に重大な影響を及ぼしかねない喫緊の課題です。その根本的な原因として、厳しい勤務実態と低賃金による職業魅力の低下、後継者となる若手人材の確保難、メディアが助長するネガティブなイメージなどが挙げられます。 こうした負のスパイラルを断ち切るためには、業界が一丸となった変革が急務と言えるでしょう。今こそ危機感を社会全体で共有し、持続可能な公共交通の実現に官民一体で取り組むとき。バス業界の再生なくして、地方創生も災害に強い社会づくりも覚束ません。未来を担う人材の確保は、我々全員に突きつけられた課題なのです。