パワーショベル vs バックホー vs ユンボ徹底比較！プロが教える違いと選び方

パワーショベル、バックホー、ユンボ。一見すると同じように見えるこれらの建機ですが、それぞれの違いをご存知ですか？本記事では、プロドライバーに必要不可欠なショベル系建機の知識について、基礎から応用まで詳しく解説します。建機の特性を理解し、状況に合わせて適切に選択・運用できる技術を身につけましょう。

パワーショベル・バックホー・ユンボの違いを比べてみよう！

パワーショベル・バックホー・ユンボの違いは何になるのでしょうか。以下で詳しく解説します。

そもそもパワーショベル・バックホー・ユンボの正体は？油圧ショベルのこと！

パワーショベル、バックホー、ユンボ。一見すると別物のように聞こえるこれらの建設機械ですが、実はすべて「油圧ショベル」の仲間なのです。

油圧ショベルとは、油圧システムを利用して作業を行う建設機械の総称。運転席（キャブ）とブーム、アーム、バケットと呼ばれる構成部品からできています。エンジンで油圧ポンプを回し、発生した油圧でシリンダーを動かすことで、ブームやアームを上下左右に稼働させ、先端のバケットで土砂を掘削したり移動したりします。

この油圧ショベルの先端アタッチメントを交換することで、同じ機体でも掘削、積込み、整地、解体など様々な作業に対応可能。現場の要求に合わせて、パワーショベル、バックホー、ユンボなど呼び名を使い分けているというわけです。

油圧ショベルの基本的な仕組みと特徴

油圧ショベルの心臓部ともいえるのが、油圧システムです。

エンジンで駆動する油圧ポンプが作り出した圧油を、バルブで制御しながらシリンダーに送ることで、ブームやアーム、バケットを動かしています。また、走行用のモーターを回して無限軌道（クローラー）を駆動し、車体自体を前後左右に移動させることもできます。

油圧を利用することで大きな力を生み出せるため、パワフルな作業性能を誇ります。一方、繊細な動きにも対応可能。レバー操作ひとつで、狭い場所での掘削や障害物を避けての移動なども可能にしています。

さらに、先端のアタッチメントを交換するだけで多彩な作業を一台でこなせる点も魅力。現場の状況に合わせて、最適な「相棒」を選べるのが油圧ショベルの強みといえるでしょう。

パワーショベル・バックホー・ユンボはどう違うの？呼び名の由来に迫る！

パワーショベルの語源と主な用途

パワーショベルは、油圧ショベル全般を指す言葉として使われることもありますが、本来は「ショベルを前に押し出す動き（クラウド動作）」に特化したタイプの油圧ショベルを意味します。

クラウド動作は、地面を強く削り取るのに適しているため、パワーショベルは主に地ならしや整地作業で活躍。ショベルを前方に押し出す力強さから、「パワーショベル」の名がつきました。

なお、パワーショベルは国内の建機メーカー・小松製作所の登録商標。同社製のショベル系建機の総称としても使われています。

バックホーの語源と得意な作業

対してバックホーは、「ショベルを手前に引き寄せる動き（ドラグ動作）」に特化した油圧ショベルの呼び名です。

ドラグ動作は溝掘りに最適。地中深くまで掘り下げ、土砂を手前に引き寄せられます。排水路の造成や管の埋設工事など、狭い溝を掘る必要がある現場で重宝されています。

バックホーの名称は、英語の「back（後方）」と「hoe（鍬）」を組み合わせた造語。ショベルを後方に引く動作に由来しています。同様の理由から、ドラグショベルとも呼ばれます。

ユンボの語源と広まった経緯

ユンボは、フランスの建機メーカー・SICAM社（シカム）の油圧ショベル「YUMBO」シリーズに語源を持つ呼称です。

1960年代、このYUMBOシリーズを日本の新三菱重工業（現・日立建機）が輸入・販売。その際、「ユンボ」の名称で国内展開したところ瞬く間に広まりました。性能の高さと相まって、ユンボは油圧ショベルの代名詞として親しまれるようになりました。

現在では建機レンタル大手のニッケンが「ユンボ」を商標登録。同社のユンボブランドが広く知られていますが、一般的にはメーカーを問わない油圧ショベル全般の愛称としても使われ続けています。

【プロ直伝】現場に合わせたショベル選び！用途別のおすすめ機種も紹介

パワーショベル、バックホー、ユンボ。それぞれに得意な作業があるショベル系建機ですが、現場の状況に合わせて最適な1台を選ぶのは意外と難しいものです。

土質や作業内容、現場の広さなど、様々な条件を考慮しなければなりません。経験豊富なプロのオペレーターなら、その違いを読み取り、適材適所で機種を使い分けているはず。

そこで本章では、ベテランオペレーターの知見を集約し、用途別のショベル選びのポイントを解説します。あわせて、おすすめの機種もピックアップ。

現場の特性を見極め、効率的な作業を実現する最適な「相棒」を見つける参考にしてください。

掘削作業に最適！バックホーのここがすごい

溝掘りや地中への埋設工事が中心となる現場では、バックホーが力を発揮します。

硬い岩盤を砕くのではなく、土砂を手前に引き寄せて溝を掘り進めるのがバックホーの得意技。ショベルを手前に引くドラグ動作により、スムーズに地中深くまで掘削できます。地質が軟らかめの現場にはバックホーがうってつけといえるでしょう。

トラブルが少なく、燃費性能にも定評のあるバックホーでおすすめなのがキャタピラー製のEシリーズ。掘削力と操作性を高いレベルで両立しており、頼もしい相棒となってくれます。国内メーカーでは、日立建機のZAXISシリーズやコマツのPC・HBシリーズも高い支持を集めています。

整地作業で真価を発揮！パワーショベルの実力とは？

一方、地ならしや整地作業が主となる現場で頼りになるのがパワーショベルです。

パワーショベルのクラウド動作は、土を強く削り取り、前方に押し出すのに最適。ショベルを前に押し出す力強さは、がれきの撤去などにも威力を発揮します。

また、車体を小刻みに左右に揺らすことで、均等に地面を整地する「マットレス仕上げ」もパワーショベルの十八番。まさにパワフルなショベル選手といえます。

パワーショベルの代名詞ともいえるのが、キャタピラー製のDシリーズ。パワーとタフネスを追求した設計が特長で、過酷な現場での使用にも耐えうる堅牢さを誇ります。国内勢では、コマツのPC200シリーズが整地のエキスパートとして知られています。

現場の慣習に合わせた呼び名の使い分けが大切

パワーショベル、バックホー、ユンボ。それぞれに得意分野があり、現場によって呼び名を使い分けるケースが多いのが実情です。

例えば土木現場では「バックホー」、建築現場では「ユンボ」と呼ぶことが一般的。重機オペレーターなら、その違いを理解しておく必要があります。

ただし、呼称は地域や会社によっても異なるため、所属現場のルールに合わせるのが賢明。「通じる呼び方」を使うのがコツといえるでしょう。

油圧ショベルという共通の基盤を持ちつつ、用途で使い分けられる多様性。パワーショベル、バックホー、ユンボの存在が、現場の数だけニーズがあることを物語っています。状況に応じた機種選定と、適切な呼称の使い分けを心がけたいものです。

ショベル系建機の運転に必要な免許と資格を解説！取得方法もチェック

車両系建設機械運転技能講習とは？パワーショベル・バックホー・ユンボに共通の資格

パワーショベル、バックホー、ユンボといったショベル系建機を運転するためには、「車両系建設機械（整地・運搬・積込み用及び掘削用）運転技能講習」の修了が必須です。

この講習は、学科講習4時間と実技講習6時間の計10時間で構成。学科では建設機械に関する知識や関係法令などを学び、実技では実機を用いた走行や作業の指導を受けます。

講習の修了者には、都道府県労働局長から修了証が交付されます。この修了証は全国で通用する国家資格であり、ショベル系建機のオペレーターとして働く上で必須の資格となっています。

移動式クレーン運転士免許の取得が必要なケースも

油圧ショベルの中には、クレーン機能を備えたタイプも存在します。こうした機体を運転するためには、別途「移動式クレーン運転士免許」の取得が必要となります。

ただし、つり上げ荷重が5トン未満の小型クレーン付きショベルなら、「小型移動式クレーン運転技能講習」の修了でOK。より軽量なクレーンワークに限定されますが、機動性に優れるため人気が高いタイプです。

いずれにせよ、クレーン機能を使用する際は、吊り荷の下に立ち入らないなど、安全に細心の注意を払う必要があります。運転士や講習の修了者は、その点をしっかりと肝に銘じておきましょう。

専門的な資格が求められる場合も！どんな時に必要？

パワーショベルやバックホーを公道上で移動させる際は、「大型特殊自動車免許」の取得が必要となるケースがあります。

油圧ショベルは基本的に公道を走行することを想定していないため、現場と現場の間を移動するためにはトレーラーに載せての輸送が一般的。とはいえ、現場の規模や状況によっては自走が求められる場合もあるのです。

また、主に災害時の復旧作業などで用いられる「アースオーガ」と呼ばれる特殊なドリル付きバックホーを操縦するには、「車両系建設機械（基礎工事用）運転技能講習」の修了証が必要となります。

これらの資格は、必ずしも全てのオペレーターに求められるものではありません。しかし、現場のニーズは多様化しており、ひとつでも多くの資格を取得しておくことが、重機オペレーターとしてのキャリアアップにつながるでしょう。

資格取得のためには、座学だけでなく実習も重要。専門学校などの教習所では、実機を用いた充実した講習を受けることができます。目的に合わせて、最適な講習先を選ぶことをおすすめします。

下記の記事も合わせてご確認ください。

2024年6月19日 ユンボ（油圧シャベル）の免許・資格取得方法とは？費用・メリット等も完全解説！

プロドライバーが知るべき！ショベル系建機のメンテナンスとトラブル対処法

油圧ショベルの定期点検ポイントと留意点

パワーショベル、バックホー、ユンボといったショベル系建機は、とてもデリケートな機械。適切なメンテナンスを怠れば、重大な事故や突発的な故障のリスクが高まります。

プロのオペレーターなら、日常点検を欠かさずに行うことが基本中の基本。特に、エンジンオイル、冷却水、作動油、バッテリー液などは毎日チェックしましょう。量や汚れだけでなく、色つやの変化にも注意が必要です。

建機から異音や異臭、過度の振動を感じたら、異常のサインかもしれません。五感を研ぎ澄まして、普段と違う変化を見逃さないこと。対症療法的な対応では、抜本的な解決にはつながりません。

油圧ショベルは、文字通り油圧で動くのがほとんど。油圧機器のメンテナンスは特に念入りに行いたいところ。ホースやシリンダーの劣化、油漏れの予兆をいち早く察知するため、作業前後の入念なチェックを心がけましょう。

ショベルやバケットのアタッチメントも、摩耗のスピードが速い部位。歯の減りや欠損、ボルトの緩みなども見落とさないようにしたいものです。

現場で起こりやすい故障とその予防策

現場での作業中、燃料切れやバッテリー上がりに遭遇したことのあるオペレーターは少なくないでしょう。こうしたトラブルは、ちょっとした工夫で防ぐことができます。

燃料補給のタイミングを計画的に管理し、常に十分な量を確保しておくのがポイント。残量が1/4を下回ったら早めに給油する、燃料タンクにこまめに目を配るなどの習慣をつけておきましょう。

バッテリー上がりにも、スペアバッテリーかブースターケーブルを用意しておけば安心。バッテリー液の点検を怠らず、長期保管時は端子を外すのも有効な手段です。

オーバーヒートにも要注意。過負荷運転が原因となることが多いため、作業の強度やペース配分を意識することが大切。水温計の警告灯が点灯したら、すぐにエンジンを停止して原因を究明しましょう。ラジエーターの冷却水が不足していないか、ファンベルトが切れていないかなどをチェックします。

突発的な故障を完全に防ぐことは難しいかもしれません。しかし備えあれば憂いなし。こまめな点検と、トラブルを想定した対策を講じておくことで、その影響を最小限に抑えることができるはずです。

油圧ショベルは、プロのドライバーにとって欠かせない相棒。常に最良のコンディションでいられるよう、メンテナンスの意識を高く持ち続けましょう。

まとめ：プロドライバーに求められるショベル系建機の知識と対応力

パワーショベル、バックホー、ユンボ。一見すると同じように見えるショベル系建機ですが、それぞれに得意とする作業があります。

プロのドライバーなら、その違いを理解し、現場の状況に応じて適材適所で使い分けられる知識が不可欠。最適な機種を選定する目利き力を磨くとともに、必要な免許・資格の計画的な取得を進め、スキルアップを図っていきたいものです。

また、建機を常にベストなコンディションに保つため、日常点検やトラブル対策を習慣づけることも重要。異常の予兆をいち早く察知し、適切に対処できる知見を身につけておくことが、安全で効率的な作業につながります。

加えて、現場ごとに異なるショベル系建機の呼び名を、状況に合わせて使い分けられる対応力も求められるでしょう。所属先のルールに沿った呼称を用いる柔軟さは、円滑なコミュニケーションを図る上でも欠かせません。

ショベル系建機への深い理解と、状況判断力に基づく対応力。その両輪を兼ね備えることが、プロのドライバーの条件ではないでしょうか。

日々の努力を重ね、信頼される職人を目指していきたいものです。油圧ショベルのプロフェッショナルとして、さらなる高みを目指して邁進しましょう。